皇位の継承とそれに伴う改元,祝日の改正 2019年4月24日
1.皇位の継承
わが国における「天皇」は,国の象徴であり国民統合の象徴とされています(憲法1条)。
なお,明治憲法では,天皇が国を統治するとされていました。
皇位(天皇の地位)の継承は,「世襲」とされ,その方法は「皇室典範」(昭和22年法律第3号)という法律に定められています(憲法2条)。
その皇室典範では,皇位は,皇統に属する男系の男子が継承するものとされています(皇室典範1条)。皇位継承の順序は,皇室典範2条に定められていますが,第1順位は皇嗣たる皇子,すなわち皇太子(皇室典範8条)となります。
どのようなときに皇位の継承が起こるかというと,「天皇が崩じた」ときです(皇室典範4条)。
したがって,現行の法体系では,天皇の死によってのみ皇位継承が発生するので,天皇の「退位」は認められていません。
2.皇室典範特例法による退位
しかしながら,「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(平成29年法律第63号。以下,「皇室典範特例法」と言います。)という特別法によって,天皇の退位(今上陛下のご譲位)が認められました。
これによると,天皇は,皇室典範特例法の施行の日に退位し,皇嗣が直ちに即位します(皇室典範特例法2条)。
「施行の日」は,公布の日から3年を超えない範囲内で政令で定めることとなっています(皇室典範特定法附則1条1項本文)。この政令を定めるにあたっては,内閣総理大臣は「皇室会議」の意見を聴くことが義務付けられています(皇室典範特例法附則1項2項)。なお,「皇室会議」は,皇族2人,衆参両院の議長及び副議長4名,内閣総理大臣,宮内庁長官,最高裁判所長官,その他の裁判官の合計10人で組織されます(皇室典範28条1項2項)。
したがって,「退位の日」は皇室典範特例法の施行の日で,その「施行の日」は,内閣総理大臣が皇室会議の意見を聴いて,内閣が「政令」で定めるということになっています。
3.退位の日と即位の日
これに基づき,内閣は,「天皇の退位等に関する皇室典範特例法の施行期日を定める政令」(平成31年第302号)を制定しました。皇室典範特例法の施行期日は「平成31年4月30日」とされました。
したがって,皇室典範特例法の施行の日に,天皇は退位するので(皇室典範特例法2項),今上陛下は,平成31年4月30日に退位することになります。
皇嗣は,「直ちに」即位するので,4月30日が即位の日かと思いきや,内閣の解釈では5月1日のようです。
4.改元
我々が日常で使っている「元号」。裁判所の事件番号も,例えば,「平成31年(ワ)第1110000号」のようにつけられますし,法律関係の書類は西暦ではなく元号を使うことが一般的です。
その元号は,内閣が「政令」で定めることとなっています(元号法(昭和54年法律第43号)1項)。皇位の継承があったときは,元号は改められることとなっています(元号法2項)。
したがって,今上陛下の退位と皇太子殿下の即位の際には元号が改められることとなります。
新しい元号については,4月1日に菅官房長官が発表し,安倍総理大臣も会見するなど,大きな話題となりました。この発表の前に「元号を改める政令(平成31年政令第143号)」が制定されています。
この政令では,「元号を令和に改める。」と定められています。
ただし,その政令の施行の日は,皇室典範特例法の施行の日の翌日とされましたので,5月1日が改元の日となります(元号を定める政令附則)。「令和」の読み方は,「元号の読み方に関する内閣告示」(平成31年内閣告示第1号)で「れいわ」とルビが振られています。
5.祝日の変化
(1)祝日法の規定
皇位継承に伴い,「祝日」も変化します。
祝日は正式には「国民の祝日」といい,国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号。以下「祝日法」と言います)で定められています(祝日法2条)。国民の祝日は,「休日」となります(祝日法3条1項)。
国民の祝日が「日曜日」であるときは,その日以後の,その日に最も近い国民の祝日でない日が「休日」となります(祝日法3条2項)。いわゆる「振替休日」で,令和元年5月5日のこどもの日が日曜日ですので,翌日の令和元年5月6日(月)が「休日」となります。
また,前日と翌日が国民の祝日である,国民の祝日でない日は,休日となります(祝日法3条3項)。いわゆる「国民の休日」で,憲法記念日とこどもの日にはさまれた5月4日(平成19年以降は「みどりの日」)が休日となっていました)。
(2)天皇誕生日の改正
皇位の継承によって,「天皇誕生日」が12月23日から2月23日に変わります(皇室典範特例法附則10条)。天皇誕生日が変わる改正の施行日は5月1日です(皇室典範特例法附則1条1項ただし書,天皇の退位等に関する皇室典範特例法の施行期日を定める政令)。
(3)即位の日とその前後の日
また,「即位の日」が「休日」とされました(天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律(平成30年法律第99号))。この休日は,祝日法にいう「国民の祝日」扱いになります(天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律附則2条1項)。
したがって,令和元年5月1日が「国民の祝日」となる結果,祝日法3条3項が適用されます。
すなわち,平成31年4月30日(火)は,前後がどちらも国民の祝日(4月29日の昭和の日(祝日)と令和元年5月1日の即位の日(祝日))なので,「休日」になり,また,令和元年5月2日(木)も,前後の日が国民の祝日なので(令和元年5月1日の即位の日(祝日)と令和元年5月3日の憲法記念日(祝日)),「休日」となります。
(4)10連休
今年のゴールデンウイークの休日と祝日は次のとおりとなります。
- 平成31年4月26日(金):平日
- 平成31年4月27日(土):休日
- 平成31年4月28日(日):休日
- 平成31年4月29日(月):祝日(昭和の日)
- 平成31年4月30日(火):休日(祝日法3条3項)
- 令和元年5月1日(水):祝日(天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律)
- 令和元年5月2日(木):休日(祝日法3条3項)
- 令和元年5月3日(金):祝日(憲法記念日)
- 令和元年5月4日(土):祝日(みどりの日)
- 令和元年5月5日(日):祝日(こどもの日)
- 令和元年5月6日(月):休日(祝日法3条2項)
- 令和元年5月7日(火):平日
「10連休」となるのは,このような法律の根拠があるからです。