皇室典範の改正と皇位の継承 2026年8月5日
1.皇室典範の改正
令和8年7月17日、「皇室典範等の一部を改正する法律」(以下、「改正法」といいます。)が成立しました。
改正法においては、「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持すること」及び「皇族の養子縁組を可能とし、養子を皇族とすること」が可能となりました(骨子)。
これに伴い、「皇室経済法」や「行政手続法」等も改正されています。「皇族の身分を離れた者及び皇族となった者の戸籍に関する法律」については、法律の題名が「皇族の身分を離れた者等の戸籍の取扱い等に関する法律」となりました。
改正法は、一部を除き「公布」の日から起算して3月(さんつき)を経過した日から施行されることになっています(附則1条)。
なお、法律の「公布」は内閣の助言と承認により天皇によって行われます(憲法7条1号)。
改正法の公布は、令和8年7月24日でしたので、改正法は令和8年10月24日に施行されることになります。
2.皇室典範の性質
わが国において「天皇」は、国家の「象徴」であり国民統合の「象徴」とされています(憲法1条)。
天皇の地位は、「世襲」であり、皇位継承は「皇室典範」で定めることになっています(憲法2条)。
「皇室典範」(こうしつてんぱん)とは、皇室の決まりを定める「法律」です。「典」も「範」も「規範」の意味で、すなわちルールの意味です。
「法」という漢字がついていませんが「法律」のひとつです。前述の憲法2条の規定から、皇室典範も実質的な意味においては憲法であると言われることがあります。
なお、現在の上皇陛下の退位を特別に認めた「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(平成29年法律第63号)も「皇室典範」と一体をなすとされています(皇室典範附則4項)。
3.女性皇族の婚姻後における皇族の身分の保持
現行の皇室典範では、「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。」と規定されています(皇室典範12条)。簡単に言うと、内親王(天皇の子、孫のうちの女性)や女王(天皇の3親等以下の皇族のうち女性)は、民間人と結婚すれば、皇族ではなくなり、民間人となるということです。皇族は戸籍に記録されず、「皇統譜」に登録されますが(皇室典範26条)、女性皇族が民間人と結婚すると「戸籍」に登録されることになります。
改正法においては、皇室典範12条が削除されますので、女性皇族は、婚姻後も皇族の身分は維持されることになります。この場合においても、皇室会議の決議によって、皇族の身分を離れることができます(皇室典範11条)。
ただし、改正法施行時における女性皇族については、民間人と婚姻する場合においても皇族会議の決議は不要で、その意思で皇族の身分を離れることができるという経過措置が設けられています(改正法附則2条前段)。
また、改正法では、女性皇族の婚姻も皇室会議の決議が必要であるとされていますが(皇室典範新10条)、現在の女性皇族の婚姻においては皇室会議の決議は不要との経過措置が設けられています(改正法附則2条後段)。
4.皇族の養子縁組
わが国には、伝統的に養子制度があり、実の親子関係ではない者同士に法律上の親子関係を設定することが可能です(民法792条以下)。このような親子関係を設定する行為が「養子縁組」です。
現在、天皇と皇族の養子縁組は、禁止されています(皇室典範9条)。過去に皇族が、養子縁組を用いたこともあったようですが、皇族が増加しすぎるとの問題で、昭和22年成立の皇室典範においては、養子を禁止したそうです。他方で、現在においては、皇位継承の候補者が少なくなっていることから、例外的に皇族の養子縁組が可能となる改正が行われました(皇室典範新9条、皇室典範新38条)。
すなわち、皇族の一部(親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王(皇嗣及び皇嗣妃を除く。))は、皇室会議の議を経て、ア)皇室典範において皇族男子であった者の嫡男系嫡出の子孫で皇族でない男子で、イ)15歳以上で、ウ)配偶者と子がいない者を、養子とすることができます(皇室典範新38条1項)。
ア)はわかりにくいですが、GHQにより昭和22年に皇族を離脱されられた11宮家の皇族男子の直系子孫の男性(法律上は民間人)を指します。これらの方々は、現在は民間人とはいえ皇室との交流もあり、もともと「皇族」ですので、「皇統に属する男系の男子」(皇室典範1条)という皇位継承の資格を有しています。
イ)養子の対象は15歳以上の男子ですので、対象者が未成年者である場合には、家庭裁判所の許可が必要となります(民法798条)。しかしながら、養子皇族男子の縁組の場合には家庭裁判所の許可は不要とされています(皇室典範新38条2項)。
皇族の養子となった人は、養子縁組のときから「皇族」となりますが(皇室典範新38条3項)、皇位継承資格は有しません(皇室典範新38条4項。皇室典範2条)。養子となった皇族男子の「子孫」には、皇位継承資格があります(皇室典範新38条6項、皇室典範2条)。
養子となった皇族男子とその子孫は、実方(養子縁組前の旧皇族の宮家)の系統として皇族の地位を有します(皇室典範新38条5項、6項)。
養子皇族男子である王(三世以下の男性皇族)は、皇族の身分を離れることができません(皇室典範新38条7項、皇室典範11条1項)。
養子皇族男子はやむを得ない特別の事情があって皇室会議の議決によって皇族の身分を離れるときにおいて(皇室典範11条2項)、養親との縁組が継続しているときは、縁組の効力は失われます(改正法38条8項前段、将来効)。養子皇族男子が、皇室の身分を離れるときに、民法上の「離縁」(養子縁組の解消)があったとみなして、法律関係が処理されることになります(皇室典範新38条8項後段)。
養子皇族男子の摂政就任順序は、内親王及び女王の次となります(皇室典範新38条9項)。
5.皇位の継承
憲法2条によって、皇位は「世襲」とされていますが、この「世襲」は「男系」を意味すると解釈されています。したがって、憲法上は、「男系女性天皇」が皇位を継承することは可能ですが、皇室典範1条において、皇位継承の資格を「男系の男子」と限っています。
今回の改正は、従来の皇位継承の資格を維持しながら、皇族数の拡大を図るものです。
皇位の継承をめぐっては、「壬申の乱」(678年)が起こったり、「北朝」と「南朝」に分かれた時代があったりして、歴史的に争いになることも少なくありませんでした。
今回の改正にあたっては、XやYahooニュースのコメントでいろいろな意見が見られました。意見を言うこと自体は自由ですが、適切な前提知識を持ち、十分に理解した上で議論したいものです。
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